お知らせ

コロナ禍で各クラブは、新規の集客が今までのように行えず、前年比30%~80%程度となり、その分を既存会員の会員定着を今まで以上に集中して行っているクラブが増えていると思われます。

また少しづつ、コロナ禍での身体活動に関する海外での論文が発表され、フィットネスクラブの進むべき方向も少しづつ、見えてきているような気もします。

前回、「コロナ禍におけるフィットネスクラブのPRポイント」として、最高の安全性を確保しているのがフィットネスクラブであることや、運動継続が感染リスク、死亡リスクを下げて、ワクチン接種後の効きを良くする旨の論文を紹介させていただき、また世界的なステイホームが長引くことで、不定愁訴を訴える人が増え、腰痛や肩こり、体のだるさを訴えていること、生活習慣病を中心とした疾患が進んでいることも、報告させていただきました。そのため現状でも、健康の二次被害が増えている国内外の論文が発表されていますが、この程、国内で非常に興味深い内容の論文が発表されました。

 

2021.年7月に、コロナの前後での運動の実施割合と運動種目別の解析についての論文が発表されました。〔「新型コロナウイルス感染症流行前後における関東地方在住の一般市民の運動実施割合の比較:運動種目別の解析」(運動疫学研究, 2021.7)〕

それによると、コロナ前後で、人の運動実施の割合がどのように変わったか、またそれは運動種目ごとに異なるのかを2019年、2020年とに分けて調査・分析しています。

調査では、2020年7月にインターネットによって運動種目(散歩・ウオーキング、ジョギング・ランニング、ストレッチ、ヨガ、筋力トレーニング、ラジオ体操、ラジオ体操以外の体操、屋内で実施する球技〔バレーボール、卓球〕、屋外で実施する球技〔野球、ゴルフ〕、水泳・水中運動、ダンス・エアロビクス、武道、山歩き・ハイキング、サイクリング)14種目の中からの実施の有無を調査しました。調査期間中に、いずれかの運動種目を一つでも実施したと回答した人は、2019年は、76.1%、2020年は、78.8%でした。

実施者の割合が、2019年に比べ、2020年で高かった運動種目は、「散歩・ウオーキング」、「ストレッチ」「ラジオ体操」「筋力トレーニング」等であり、低かった種目は、「屋外で実施する球技〔野球、ゴルフ〕、」「水泳・水中運動、」等でした。よって、新型コロナの流行下では、流行前より運動を実施している者の割合が高くなった可能性があるとしています。

運動種目別では、ストレッチ、筋力トレーニングなどの個人が自宅や周辺で行う種目が高くなる一方、施設内や集団で行う種目で低くなっていました。身体活動促進の立場から、自宅等で新たに運動を始めた人が流行後も継続して実施できるような支援が求められると締めくくっています。

 

このことは、多くのことをフィットネスクラブ関係者に示唆しています。

その内容について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

 

論文中では、期間内(2020年6月~7月)に1日以上行った種目の人は実施群としていますが、運動継続の立場からは、週1回以上継続して行うことが好ましいと考え、感度分析として行われた週一回以上の分析を今回の考察に用いることとしました。

全体として、週1回以上運動実施したベスト5は、(有意差有:p < 0 . 0 5) 表⒈のとおりで、①散歩・ウオーキング、②ストレッチ、③筋力トレーニング、④ラジオ体操、⑤体操(ラジオ体操以外の軽運動)でした。

とくに、ストレッチは、2019年に比べて2020年は、約10%も、実施した人が増えていることがわかりました。

表1.  週1回以上運動実施したベスト5 (p < 0 . 0 5)

    2019年 (%) 2020年 (%) 増加率(%)〔2020-2019〕
散歩・ウオーキング 39.9 41.8  1.9
ストレッチ 28.3 37.9  9.6
筋力トレーニング 18.6 21.3  2.7
ラジオ体操 8.3 9.7  1.4
体操(ラジオ体操以外の軽運動) 6.9 9.5  2.6

 

 

また、男女別、年代別に2019年と2020年を比べると、表2のように、男性では、ストレッチは全体及び各年代ともすべて増加しており、ヨガでは全体および20~30歳台が増加、体操 (ラジオ以外)では全体及び60~70歳台、筋トレでは全体および20~30歳台、ウオーキング、山歩き・ハイキングでは20~30歳台のみが増加していました。

男女別、年代別で解析した結果

男性

表2.    2019年に比べ、2020年に有意(p < 0 . 0 5) に増加した項目は ●

  増加幅 (%) 全体20~70歳台 20~30歳台 40~50歳台 60~70歳台
ストレッチ 8.4-8.9    ●   ●   ●   ●
ヨガ 1.6-2.9    ●   ●    
体操 (ラジオ以外) 1.4-1.9    ●       ●
筋トレ 2.8-5.3    ●   ●    
ウオーキング 4.6     ●    
山歩き・ハイキング 2.6     ●    

 

女性では、表3のように、ストレッチは全体及び各年代ともすべて増加しており、ヨガでは全体および20~30歳台が増加、ラジオ体操及び体操 (ラジオ以外)では全体及び40~50歳台、60~70歳台、筋トレでは全体および20~30歳台が増加していました。

女性

表3.    2019年に比べ、2020年に有意に増加した項目 ●

  増加幅 (%) 全体20~70歳台 20~30歳台 40~50歳台 60~70歳台
ストレッチ 8.6-12.7    ●   ●   ●   ●
ヨガ 1.5-3.2    ●   ●    
ラジオ体操 2.2-2.8    ●     ●   ●
体操 (ラジオ以外) 2.3-5.5    ●     ●   ●
筋トレ 2.8-6.4    ●   ●    
           

 

 

一方で、コロナ下においては、以下のような状況が起こっていると、先行研究等では、報告されています。

長期間の外出自粛のためのSTAY HOMEで健康阻害が起こっている。

・毎日の座っている時間(座位行動)は1日あたり5時間から8時間に増加。(A Ammar.2020.12)

〔一日の座位時間が4時間超えると、死亡率が上がり、冠動脈疾患や糖尿病、メタボリックシンドローム、がんなどの健康阻害リスクが高まるという報告されている。〕

・身体の不調を訴えた人が、男性の50.2%に対して女性は64.2%。(インターネット調査、ツムラ 2020.11.)

〔医療体制がひっ迫していることから、医療機関受診を躊躇している人が多い。

女性の不調の、1位「肩こり」(72.8%)、2位「疲れ・だるさ」(71.8%)、3位「目の疲れ」(71.7%)

で、女性の不調スコアが高い。〕

・腰痛を訴える人が増えた (Seyda Celenay2020.9)

ステイホームの個人は、3か月のCovid-19ロックダウン中に、自宅以外の職場で働いていた人よりも

腰痛が多く、コロナ恐怖症が強かった

・フィットネスクラブ6,200店、利用者数550万人以上の運動機会が、日常から失われた。

(〔一社〕日本フィットネス産業協会.2020.11)

〔民間FC6,200店、会員数550万人以上が。緊急事態宣言発令下で、健康の保持増進のための運動機会が、日常から失われたことになり、「健康二次被害」の発生している可能性が高い。〕

・フィットネスクラブへの休業要請のため会員数10~40%減となっている。(PJフィットネス研究所調べ)

 

これらの社会経済的背景を勘案すると、不定愁訴の解消に必要な運動としてストレッチやヨガ、ラジオ体操やラジオ体操以外の体操・軽運動が、2019年より2020年が明らかに実施者が増え、また肩こりや腰痛者が増えている現状で、筋力トレーニングの実施者も増えていることも納得できると思われます。

フィットネスクラブでは、これらの現状を踏まえ、安全でより効果的、効率的なストレッチ、ヨガ、筋トレを指導する体制を強化し、自宅や一人では、限界のあるストレッチや体操、ヨガなどの専門的なプログラムを提供することが、求められています。

また、最新機器としての軽運動マシンやストレッチマシン等をアピールし、快適で、効果的なエクササイズやプログラムを提供している施設であることをPRすることが、必要不可欠と考えます。

 

このような状況から、いまフィットネス施設に求められていることは以下のような内容が考えられます。

 

フィットネス施設として求められること

自宅にいることで増えたエクササイズ内容(ストレッチ、筋トレ、ラジオ体操、ラジオ体操以外の軽運動体操、ヨガ)を補完し、より安全な効果的なエクササイズを提供する。

・ストレッチを電動で行う最新マシンを提供し、肩や腰の受動的なストレッチやほぐしのエクササイズを提供する。

・自宅で行う筋トレでは、自重負荷のため、エクササイズとしての限界があり、クラブでのマシントレーニングやCG6のように軽運動と有酸素運動が一度にできる機器の提供により、楽しく効果的にエクササイズできることをアピールする。

・軽運動として足関節、股関節、肩関節、腰部周辺のパッシブエクササイズを提供

して、いろいろな体操をより効果的に行えるようにする。

・ヨガのレッスンの動画を提供することで、クラブ側からの継続的な情報も提供する。

 

以上のように、今までのフィットネスクラブで提供しているサービスに加えて、STAY HOMEの弊害を補うための軽運動などの身体活動促進や不定愁訴の解消、ストレス解消、免疫力を向上させる、エビデンスに基づいたプログラムの提供が不可欠です。また人との接触をできる限り減らすため、誰とも会わず、いつでも、気軽に行えるプログラムが受けられる環境も作ることも必要になります。

他方、フィットネスクラブでコーチングして自分でいろいろなことができるようになる、いつでも一人でも行えるボディメンテナンスが、重要になることは言うまでもありません。

参考文献:星玲奈, 菊池宏幸,井上茂他、「新型コロナウイルス感染症流行前後における関東地方在住の一般市民の運動実施割合の比較:運動種目別の解析」(運動疫学研究, 2021.7)〕

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