(株)プロフィットジャパン
博士(医学) 菊 賀 信 雅
このところ、水素の活用についてのエビデンスが頻繁に見られるようになってきました。
2007年にNature medicineにOhsawaらによって発表された論文〔水素が細胞中のヒドロキシルラジカル
やペルオキシナイトライトなどの酸化力が強い活性酸素種を消去すること,ならびに水素が酸化ストレスに対し
て細胞防御機能を有することを明らかにした〕を皮切りに、水素の治療効果や予防効果が調べられ、1,600を超
す論文が発表されています。これらの論文では,ほぼすべての臓器で直接的あるいは間接的に酸化ストレスが関
与する疾患モデルに対して水素の効果があることが示されています。さらに,水素には抗炎症作用や抗アポトー
シス作用,抗アレルギー作用などの多くの機能があることや,エネルギー代謝を活性化することも明らかになり
ました。
人間は生命を維持するために酸素を必要とします。酸素を取り込むことで、酸化的リン酸化によるエネルギー代
謝の副産物として,日常的に体内で活性酸素種が生成されます。さらに,喫煙や大気汚染,紫外線や放射線への
曝露,激しい運動,身体的あるいは心理的ストレスなどによって,過剰な活性酸素種が産生されます。活性酸素
種が過剰に産生され内因性の抗酸化能力が低減すると,酸化によって有害な作用が発生し,その結果 “酸化ス
トレス ”となります。
フィットネスクラブでも、運動することで生理学的に酸素を使う中で、活性酸素種は、発生します。
上記にあるように水素を摂取することが、この活性酸素種に有効であるとする研究結果が数多く報告され、フィ
ットネスクラブでは、手軽に水素が摂取できるとして、水素水の販売や定額でクラブでも水素水をボトルに入れ
て持ち帰れるということで、多くの人がこのサービスを利用しています。
ただ、水素は、原子の中で最も小さい物質でペットボトルなどの容器は容易に通り抜けるので、
水素水として体内に補給するのであれば、生成してすぐに飲むことも必要になるため、水分補給が主たる効果と
の指摘もあります。
スポーツとの関連も数多く報告されています。
9月3日の日本体力医学会(佐賀大会)では、非常に興味深い研究報告がありました。
「水素ガス吸引が運動時の骨格筋エネルギー代謝に及ぼす影響」について桐蔭横浜大学大学院の桜井 智野風教
授によって発表されました。
水素ガス吸入によりATP産生量の減少が抑制されたことから,水素ガス吸引は運動中の骨格筋のエネルギー代
謝に影響を与え,活性酸素を消去してミトコンドリアを保護する可能性が示唆されたというものです。
桜井先生は、現在に至るまで、数多く論文や学会の発表をされ、
●水素吸引することで、・運動時のエネルギーであるATPの生成が増加する。
・運動時の酸素摂取量が増加する。
・運動時の心拍数は低下する。
・運動後の血中乳酸濃度が上昇することから、速筋線維の動員を促進している。
・水素吸引することで、運動時の発揮パワーは上昇し、反復時の出力は維持される。
また、健康の関連では
●水素吸引することで ・脂肪分解を向上させる。
・体内の酸素動態に影響を及ぼし、保温効果をもたらす。
・運動後の酸化ストレスを軽減できる。
などが、あります。
水素の研究についてはそれ以外にも数多く行われており、医療機関では、高額の専門機器にて、治療行為として
幅広く行われています。最近では、健康関連の展示会等でも、水素吸引関連のブースが出展しており、より安価
な方法が広まっていくことが期待されます。
水素に関する論文で、総説(総括説明論文)も、複数示されており、健康やスポーツとの関連も触れられていま
す。2)、3)
当社関連でも、『水活』という水素を吸引するプログラムが始まっています。(写真1.)
水筒サイズの専用ボトルに、水をいれて水素発生剤を入れるだけで、水素が発生します。
鼻・口から吸入するマウスピースやカニューレが付属され、自然由来のピュア水素を直接吸引が可能てす。
鼻や口から呼吸吸収することで体内に直接取り込むことができるため水素濃度の減少を大きく抑えることが
できます。また、吸入は体内バリアの影響を受けにくく、カラダの細部まで高濃度水素を浸透させることができます。クリニックなどで行われる水素吸入もこの形式です。機器及び水素発生剤は非常に安価で、フィットネスクラ
ブや自宅でもリクライニングチェア等に座って、15分間、安静にしてただ普通に呼吸を続けていただければ、
吸引できます。クラブでの有料プログラムとして、また物販による売上増に最適です。
今年度、健康日本21(第3次)、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」が、スタートし、高血
圧や糖尿病などの疾病別運動プログラムでは、それを実践する場所としてトレッドミルやエルゴメーター、ウェ
イトマシーンを利用したトレーニングプログラムが示され、それらを備えたフィットネスクラブが主戦場とし
て想定されています。運動による酸化ストレスを解消するための、画期的なプログラムとして、今後、幅広く水
素吸引が利用され、新たなビジネスアイテムとしての広がりも期待できるのではと思っています。
ただ、普段から運動している人の割合は、30%に届いていません。(身体活動・運動ガイド2023)
そこで、より参加しやすい運動として、ストレッチが注目されています。
近年、ストレッチをおこなうことで、動脈スティフネス(動脈硬化指数)が改善し血管が柔らかくなることが明
らかになってきています(Nishiwaki et al. 2015)。
他動運動としてのストレッチは、パーフェクトパッシブであり、身体をマシンに任せることでストレッチします。
同じように、水素の吸引もチェアに座って、ただ水素を吸うだけで、リラックスして体温をあげて、皮膚ストレ
スや脂肪減少につながることの可能性もある為、軽運動をすすめる中で、運動初心者や運動が苦手な人、嫌いな
人にも進めやすいのではと思います。
いずれにしても現代では酸化ストレスは何らかの形で、解消することが必要なため、生活に身近なフィットネス
クラブでのサービスが重要になっていくことは言うまでもありません。
参考文献
1)Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals
I Ohsawa et .al . Nature medicine, 2007
2)総説、水素医学の創始, 展開, 今後の可能性: 広範な疾患に対する分子状水素の予防ならびに治療の臨床応用
へ向かって 太田成男 Journal of Japanese Biochemical Society, 2015
3)総説、性酸素種と水素療法 渡辺正仁, 由留木裕子, 有末伊織, 藤田浩之 保健医療学, 2020
4)Effect of hydrogen gas inhalation on energy metabolism during exercise in skeletal muscle
桜井智野風(アメリカスポーツ医学会 ASCM コロラド 2023.)
5)⽔素ガス吸引が運動時の⾻格筋エネルギー代謝に及ぼす影響、 桜井智野風 (第78回⽇本体⼒医学会 佐
賀 2024)
6)The Little Book of Hydrogen and Exercise 桜井智野風 2024