研究・業界情報


厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は4月10日、2065年まで50年間の将来推計人口を公表しました。2015年に1億2709万人の総人口は2053年に1億人を割り、2065年には3割減の8808万人になるとしています。推計の前提となる50年後の合計特殊出生率を前回推計から上方修正(1.35➡1.44)、1億人割れは前回推計より5年遅くなりました。

 

また、経済産業省の統計では、フィットネスクラブの会員の年齢構成比の変化は、グラフ1のように、平成15年には、20歳台、30歳台が約5割だったものが、平成26年には、約3割となり、40歳以上が7割となっています。

グラフ1 フィットネス会員の年齢構成割合(%)の変化

(平成27年経済産業省、第3次産業活動指数と特定サービス産業動態統計)

これをみても、フィットネスのお客様の平均年齢は、確実に上がっています。これからはさらに高齢化が進み、平均年齢が上がることが予想されます。
最も多い年齢層が60歳台(30.3%)となり、50歳台18.1%、40歳台19.6%と約70%が、中高年であり、まさにシニアフィットネスの時代といってもいいかもしれません。上記の50年後の統計で、65歳以上の割合が今より、12%増える予測ですので、フィットネスの会員構成の中の4~5割が、60歳以上となるかもしれません。

シニア層の需要が高まる中で、フィットネスクラブでは介護予防の効果に着目したサービスが活発化しています。リハビリとフィットネスの融合を目指した機能訓練施設の開設、コンビニエンスストアと連携した健康管理サービスの実施、スポーツクラブ型のデイサービス、自治体の介護予防事業の受託、医療機関と連携したサービス等、シニア層を意識した数多くの取組が実施されています。

グラフ2

経済産業省の担当者は、「フィットネスクラブ」は「生活関連サービス業,娯楽業」という位置付けから、「健康産業」として、「医療,福祉」に近い存在になっているとも言えるのではないかと分析しており、 第3次産業活動指数(17年=100)で、「フィットネスクラブ」と「生活関連サービス業,娯楽業」の動向を比較してみると両者は全く異なる動きを示しており。(グラフ2)「フィットネスクラブ」は、景気感応度が低く、緩やかな上昇を続ける「医療,福祉」に近い動きを示しているとしています。

 

シニアの需要が増え介護予防を目的としたフィットネスとしては、有酸素運動や筋力トレーニングを中心とした積極的に身体を動かすというプログラムだけではなく、ラジオ体操などの軽運動や身体を休めるというプログラムも不可欠となります。

通常のフィットネスクラブでは、有酸素運動、筋力トレーニング、スイミングなどの、身体に負荷(Load)をかけることを中心に行います。各クラブでは、それぞれの種目について、負荷、回数、セット、時間、カロリー、頻度など詳細にお客様にアドバイスします。また、トレーニングが終わるとシャワーやお風呂、ジャグジー、サウナなどの施設(ハード)のサービス提供が中心で、トレーニング(Load)にあるような詳細なプログラムとして提供をしていません。

私は、各フィットネスクラブで差別化できるプログラムとして、L&Rメソッド をお勧めしています。L&Rメソッドとは、Load(負荷)&Recovery(回復、体調調整)のことです。

中高年者、低体力者については、Load(負荷)とRecovery(回復、体調調整)とをバランスよくプログラム化して提供しないと疲労過多になってしまいがちです。よって、Load のトレーニングの前後には、Recoverできるボディメンテナンスが不可欠です。

今必要とされているのはRecovery Bodymaintenance です。

 

また、一般的な休養や体調調整(身体を休める)の方法もいろいろなものがありますが、身体へのLoad(負荷)

の程度によってⅠ~Ⅴに分けられます。(表.1)

一般的な休養(体調調整)のうち

Ⅰは、メディカルアプローチの為、医療分野での対応になり、病院や接骨院へ行って診断を受け適切に処置してもらい、塗り薬や飲み薬をもらって後は安静にして回復を待ちます。Ⅱは、なんとなく身体がだるい、肩がこる,腰が重いという方が行う行動で、お風呂や温泉に行ったり、疲労回復に効くドリンク剤(ピップ内服液、リポビタンなど)や腰痛に効く塗り薬やはり薬を買うなどです。これらの代表は、身体を温めるです。この大きな目的は、血行促進です。

Ⅲは、マッサージを受けたり、鍼灸やカイロ、整体に通って体調を整える人、また、電動マッサージ器や健康グッズなどを購入されることによる体調調整で、これらの代表は、身体をほぐすです。この目的も血行促進です。

Ⅳは、健康に気を配っている方で、時々ストレッチをしたり朝ラジオ体操をしたりウオ―キングをしたりしています。運動としては軽運動の範囲で、ドキドキハーハ―したりたくさん汗をかいたりする事はあまりありません。これらは、身体を伸ばす、動かすです。これらも、ほぐして伸ばして血行促進しています。Ⅴは、トレーニングとして筋力維持・アップをしたり、心肺機能の向上のためにドキドキハーハ―する運動を一定時間行います。また、エアロビクスやいろいろなスポーツを行うことで身体全体の筋肉を適度に使い身体を積極的に動かすことで運動不足を解消し肩こりや腰痛を解消し疲れにくい身体づくりに役立ちます。これらのトレーニングも、もちろん血行促進して筋力のアップやスタミナの向上が目的です。

これらの中では、Ⅰ~Ⅲは主にRecoveryであり、Ⅳは、Recovery& Load、ⅤはLoadです。いずれも血行促進を目的にしており、自ら血液循環を良くすることで、体調調整を図っており、シニアの健康づくりとしては運動である必要はないと思います。

また、日常生活の中では半分以上が座っている時間であり、座っている時間が長いことで、死亡リスクが高まるということが明らかになっています。

座っている時間のことを座位行動(Sedentary behavior)といいますが、1日のうちの約55~60%は座位行動です。覚醒時間のうち半分以上は座っていることになり、この時間は1~1.5メッツであるため、当然エネルギー消費量はもっとも低くなります。(図2)。また軽強度運動(Light Intesity)は、1.5~3.0メッツの活動(立位、立って軽く移動する)であり、この時間が増えれば、エネルギー消費量は、2~3倍となるため、身体の代謝機能が大きく異なることとなります。

中高強度の活動(Moderate Intensity、3メッツ以上)は5%(約48分)で、フィットネスプログラムは、この中高等度活動にあたるのですが、もともと一日のうちの5%しかない活動を増やそうというのですから、なかなか難しいと言わざる負えません。よって、まずは、座っている時間を減らして低強度活動を増やすための啓蒙が必要です。それは血行促進のためのものであり、運動である必要はありません。1.5~3メッツの活動(ストレッチ、軽運動)、上記でいうリカバリーが主たる活動であると思います。

 

健康づくりとしての身体活動は、ウオーキングが推奨されていますが、リカバリープログラムとしての「温めたり」「ほぐしたり」「伸ばしたり」もシニアフィットネスには、不可欠な要素です。

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