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『シニアの人口は3,557万人(28.1%)。健康寿命は延伸していますか?』
(株)プロフィットジャパン
菊賀信雅

今年も、9月17日の敬老の日に、高齢者の人口統計が発表されました。
それによると、65歳以上の人口は、3,557万人で、総人口に占める割合は、28.1%となりました。
70歳以上の人口は、2,618万人(20.7%)で、初めて20%を超えました。男女別の高齢者は、男性1,545万人、女性2,012万人と女性が初めて2,000万人を超えました。
労働力調査では、働く高齢者は、807万人で、就業者に占める割合は12.4%でした。2015年内閣府が行った調査では、仕事を続けたいと回答した65歳~69歳は、65%と高く、政府は継続雇用の年齢を65歳から70歳への引き上げを検討しているとのことです。当然年金受給も70歳超を選択できるようにとしています。

厚生労働省は、今後も高齢者の割合が増えることを見越して、平成23年2月より健康寿命の延伸のためのスマートライフプロジェクトを推進しています。
そのテーマの中心は、「運動」「食生活」「禁煙」です。
「運動」は、
「+10(プラステン)」を合言葉に、厚生労働省が身体活動を、国民に実践してもらうためにつくった、「運動によって健康増進を実現」するための身体活動基準2013のガイドラインを、もとにいろいろな身体活動の普及を行っています。
その中では、「+10」によって「死亡のリスクを2.8%」「生活習慣病発症を3.6%」「ガン発症を3.2%」「ロコモ・認知症の発症を8.8%」低下させることが可能なことが、示唆されています。
減量効果としても、+10を1年間継続すると、1.0~2.0kg減の効果が期待できるとしています。

「食生活」では、スマートイートとして『毎日プラス一皿の野菜』『朝食をスマートにとる』と称して、ちょっと意識して一皿の野菜を取ること、朝カフェの軽食やおにぎりでも一日のスタートとして必ず食事をすることで、理想的な食生活に近づくとしています。
「禁煙」:たばこは、肺がんをはじめとした多くのがんや、虚血性心疾患、脳血管疾患などの疾患、低出生体重児や流・早産など妊娠に関連した異常の危険因子であることが以前より明らかになっています。たばこに含まれるニコチンには依存性があり、自分の意志だけでは、やめたくてもやめられないことが多いですが、禁煙に成功すれば、喫煙を継続した場合に比べて、これらの疾患の危険性は減少するとしています。
平成30年の調査では、男性の喫煙率は27.8%、女性の喫煙率は8.7%となっており、男性は減少傾向で女性は横ばいです。諸外国と比べると、未だ高い状況にあり、約1400万人が喫煙していると推定されています。今後さらなる喫煙率の減少に向けたアクションが必要となっています。

スマートライフプロジェクトが、スタートして、数年がたっていますが、果たして健康寿命は延びているのでしょうか。
2018年3月、厚生労働省は、2016年の平均寿命と健康寿命の年齢を発表しました。〔この場合の健康寿命とは、日常生活に制限のない期間としています。つまり、食事、トイレ、お風呂、着替えなど身の回りのことが、自分ひとりできる人〕 〔グラフ①②参照〕

平成28年の平均寿命は、男性で80.98歳、女性で87.14歳です。
また、健康寿命は、男性で72.14歳、女性で74.79歳です。
平均寿命から健康寿命を引く(健康じゃない期間)と、男性で8.84年、女性で12.35年あることが分かります。
また平成28 年の健康寿命は、平成22 年と比較して男性で1.72 年、女性で1.17 年増加しています。 同期間における平均寿命は、男性で1.43 年(79.55 年→80.98 年)、女性で0.84 年(86.30 年→87.14 年)増加したことから、健康寿命の増加分は平均寿命のそれを上回っており、現時点ですこしですが、健康寿命は延伸しているのではないかと考えられます。
しかし、前述の 健康じゃない期間、女性の12年あまり、男性の約9年。
この9~12年は、介護施設での寝たきりや認知症などの病気で9~12年以上も生きていくことになります。あくまでも平均値ですが、この期間をいかに短くする取り組みをしていくかがフィットネス産業にも問われています。
人生100年時代と言われていて、これからも平均寿命が延びていくことでしょう。「ピンピンコロリ」で人生を終えるために、本人の高い意識と我々フィットネス産業の果たす役割はより大きくなっていくことは必然です。
また、運動や身体活動を進めていくにあたり、メディカルとの連携も不可欠です。メディカル分野では、早くから整形外科学会が推奨する、ロコモチャレンジが、啓蒙活動を積極的に進めており、そのことで、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)を認知している国民の割合が現在は、2012 年(平成24 年)調査結果に比較して2.7 倍に上昇しているそうです。
ロコモティブシンドロームという言葉・概念の認知度を高めることによって、個々人の行動変容を目指している。日本整形外科学会は「ロコモ チャレンジ!」の中では、別紙のような、ロコトレ、ロコトレプラスを
運動として、進めています。
少しでも健康で長生きしていただく為には、フィットネス産業に携わるプレイヤーもやはり運動だけではなく、日々の食生活や禁煙サポート、そして健康診断のデータなどで人の身体を知り、積極的に、シニア層にもアプローチしていくことが 大切だと思います。

引用元 厚生労働省 厚生労働省 第11回健康日本21(第2次)推進専門委員会 厚生労働省
ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト https://locomo-joa.jp/check/locotre/

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