研究・業界情報

『ビッグデータの生存分析から、退会者を予測する』
(株)プロフィットジャパン
菊賀信雅


PJフィットネス研究所では、最新のフィットネス会員の動向を探るため、フィットネスクラブのデータを集積し、分析を行っています。

2006年1月から2018年6月までに入会した29,593人(クラブ数N=3、関東)の12年間のデータセットの中から、入会した年月日、会員の性別、年齢、退会した年月日を調査し追跡しました。

それによると、全会員の年齢の平均は41.7歳で中央値は、39.0歳でした。2006年1月から2018年6月までに入会者数と年齢の平均、中央値等は表1の通りです。また、年齢層別入会者数は、表2.とグラフ1の通りです。〔グラフ1の年代_7は、20歳代から80歳代〕

 

2006年1月から入会した人のうち、途中で辞めた人は、24,266人となり、現在の在籍者は、5,327人となっています。(表3)

退会した24,266人のうち男性は、6,564人で、女性は17,702人でした。2018年6月時点で継続していた人は、男性で1,407人、女性で3,920人でした。

男性の割合が、17.7%、女性18.1%で、性別による統計的な差はありませんでした。

また、年齢層別の退会の有無のクロス集計表(表4)では、継続者の割合は、20歳代では、15.9%、30歳代では9.4%、40歳代では、17.7%、50歳代では28.9%、60歳代では30.3%、70歳代では32.8%、80歳代では23.5%と年齢層ごとに、継続と退会の割合には、有意差がありました。(P<0.001)

退会者の継続年月を調べると、退会までの平均月数は、18.1ヶ月で中央値は10.1ヶ月、最頻値は5ヶ月でした。(表5)

 

生存者=在籍者、途中で、やめた人を退会者として、入会してから何ヶ月で辞めたかをグラフにしたものが、グラフ2です。これを見ると、5ヶ月のところが一番多くなっています。

すなわち、この集団では入会してから、5ヶ月で辞めてしまう人が最も多いことがわかります。

 

 

その入会者がいつ辞めたかをイベントとして、生存分析を行いました。

生存分析とは・・・イベント(今回のフィットネスクラブの会員の場合は退会)が起こるまでの時間とイベントの関係に焦点を当てる分析である。通常は医学的な事柄のイベントが起こるまでの時間、死亡までの時間、疾病の再発や回復までの時間などがある。

 

また、全会員を年代層別にどのくらい在籍したかを表したのが、グラフ3です。

これを見ると、年齢層別の退会率が最も低いのは、70歳代で、以下60歳代、80歳代、50歳代、40歳代、30歳代、20歳代と年齢が若くなるほど退会しやすいことがわかります。

グラフが小さいので、読み取りにくいと思いますが、5年生存率(在籍率)は、50歳代では約30%ですが、40歳代では約15%、20歳、30歳代では、10%以下となっています。このグラフでは、入会してから2年以内の傾きが急であり(たくさんの人が退会している)、20歳30歳代では、1年以内に50%が、ドロップアウトしています。

20歳代を1とすると、30歳代で0.78倍、40歳代で0.48倍、50歳代で0.33倍、60歳代で0.28倍、70歳代で0.25倍、80歳代で0.32倍の割合で退会となっています。

 

各自社のクラブの退会者の傾向を知ることで、退会者を予測することが可能になり、さらに詳細の特徴を把握できれば、より具体的な対象者を割り出すことが可能となります。このことは、クラブごとに傾向が異なり、性別、年齢、職業、学歴、配偶者の有無、家族の有無、目的や心理的因子によっても異なる傾向があるのではと思っています。〔詳細は現在解析中〕それらのことが明らかになることで、より精度の高い予測ができることになります。

つい最近のACSMの研究でも、シニア層の運動の継続について予測因子を明らかにしており、それらを参考にしてエビデンスに基づいたフィットネス運営を行うことが必要とされています。

 

20歳代を1とすると、30歳代で0.78倍、40歳代で0.48倍、50歳代で0.33倍、60歳代で0.28倍、70歳代で0.25倍、80歳代で0.32倍の割合で退会となっています。〔EXP:ハザート比〕

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