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コーチングテクニックを身に付けよう


本誌92号で、「ティーチング」と「コーチング」の違いや、会員定着には、コーチングが不可欠だということについて、触れさせていただきました。

フィットネスクラブの会員(クライアント)は、インストラクターからクラブの利用法やマシンの使い方、プログラムの参加の仕方を「ティーチング」を受けて習得し、一通りの内容を教わったら、利用の仕方をマスターします。そのタイミングでインストラクターは、お客様とのコミュニケーションによって、その会員の方が「どうなりたいか」「どうしたいか」などの目的や向かっている方向や未来の自分についてのイメージを聞き出さない(傾聴)といけません。この聞き出しを行って、相手の目標達成に必要なことを一緒に探していくサポート「コーチング」を行うことになります。

コーチングは、一方的に教え与えるのではなく、『どうなりたいですか』、『どのようにしたらいいと思いますか』、『具体的には』、というように、問いかけ(質問、傾聴)をして、クライアントに考えてもらい、「気づき」や「自覚的な行動を引き出す」ためのコミュニケーションの手法です。〔インストラクター側からは、答えを言わない〕

クライアント自らが気付き、行動することで得られる成果が高い場合が多く、クライアントと一緒に考え、悩み、解決策を引き出し、本人が実際に、やってみようという気持ちを持っていただくための動機づけが必要です。(やる気を引き出す)

現場では、研修等で勉強したことをついついお客様にたくさん話してしまう「ティーチング」になりがちです。しかし、それではお客様の自主性ややる気が醸成されず、フィットネスはつらいもので、痩せるには大変な思いをしなければならない、自分でモチベーションを維持しなければならないと、ネガティブな事ばかりが、意識に残ってしまいます。つらいというイメージが先行すると、足がクラブに向かず、習慣化が図れません。習慣化するためには、本人の望む目標を聞き出して、それに少しづつ近づくように、無理のないスケジュール(週1回~2回)で確実に来られるようにコーチングとティーチングを使い分けて、指導をしていくのがとても大切なことだと思います。

 

コーチングを行うにあたって、クライアントから聴きだし(傾聴)を進めることが大切ですが、その折に、いくつかのことに気を付けてコーチングを進めていかなくてはなりません。

コーチングにおいては、目標の設定が不可欠ですが、その中で、ギャップ分析とSMART法則をふまえて行うことが必要です。

 

A目標を聴くための注意すべきコーチングテクニック

 

ギャップ分析

なぜ、そうなったか、そのようなことが起こったか、現状と要件やあるべき姿、目標との乖離、差異について分析する方法

フィットネスの指導現場では、お客様に「どうなりたいですか」と聞くと、「今より、10キロぐらい痩せたい」とか、「20歳の頃履いていた29インチのジーンズを履きたい(現在35インチ)」というように、かなり遠い目標を言われるケースがよくあります。

その時、トレーナーとしては、「わかりました、それでは、10キロやせるためのプログラムをご紹介します」というように、その目標を肯定して、それに向かっての指導の内容を提案することがあります。

しかし、現状をもう少し詳細に分析して、その目標と現実がどのくらい離れているかをお客様にきちんと理解していただく必要があります。現状をしっかりと把握して、どうしてそうなったのかや、今後どうしなければいけないかをお客様自身が強く思わなければ、なかなか目標には近づきません。

そこで、まず「As Is(現状)」を正確に理解していただきます。そこで、現状では、体重が60キロあって、1日の歩数が、6,000歩程度で、ほとんど運動していない、食べるもの油物が好きなどの生活活動習慣や食生活習慣を簡単に教えていただきます。

そのうえで、「To Be(どうなりたいか)」を聞きます。ここで、目標があまりかけ離れた数字であれば、コーチングによって、さりげなく修正するようにしていきます。

先ほどの例で行くと、10キロ減らすというお客様に、そのことは否定せず、まずは、1か月の目標を1ページ目として、1~1.5キロを減らすことを提案します。

そして、それを達成するために、どうしたらよいかを具体的に列挙(理想の列挙)します。その列挙した行動を行う上での問題点を挙げて、それをひとつづつ、克服する方法をお客様と一緒に考えていきます。

 

 

そのうえで、目標を立てるときに大切な項目、

pecific「具体的であること」、

easrale「計測可能」

chievable「達成可能」

ealistic「現実的」

ime phased「時間(期限)の設定」

 

の頭文字まとめた、SMARTの法則にもとづいて、

目標をできるだけ具体的で、計測できる数値で現れるものに置き換えて、その目標は現実的で、そう難しくなく達成できて、その目標をいつまでに達成するのかをコーチングによって聴きだし、導いていきます。

先ほどの例で言うと、10キロ痩せたいと言っているお客様に対して、その希望は肯定しつつも、いくつかのページに分けて提案します。(フューチャーページング) まずは最初の1ページ目として3か月程度の期間で達成可能な、3~4キロ程度のシェイプアップを提案します。その第一目標が達成されたところで、第2ページ目として、次の3か月で3キロ程度、3ページ目としてさらに3か月で3キロとトータル9ヶ月で10キロ程度まで、導いていきます。1ページ目のコーチングでは、近い目標なので達成できるということをお客様に十分自覚していただき気持ちに寄り添う(ラポール)ことでモチベーションを保ち、2ページ目のコーチングでは、1ページ目の途中ではどうだったかの感想を聞いて励まし、もう少し頑張れば2ページ目が達成できると激励し、3ページ目のコーチングでは、これを乗り越えると、当初の目的までもう少しだということを話し、気持ちに寄り添い、励ましていくことで、確実に目標達成まで導いていきます。

常に、SMARTの法則にもとづいて目標を更新していき、最後のゴールとなる目的地に至るまで、コーチングによって導いていきます。

 

もし、数値で現れにくい目標の場合は、主観的なものに置き換えることで代用します。

たとえば、肩こりを解消したいという目標の場合、なかなか数値に置き換えるのが難しいですが、その場合は、

肩こりの場所と痛みの度合いを具体的に聞いて〔辛さの度合いを1~5で、表現してもらう【5:とってもつらい、4:かなりつらい、3:つらい、2:すこしつらい、1:ちょっとつらい】〕、腕を上げていただいたりおろしたりする感覚も記録します。

そのうえで、1~2ヶ月で、どの程度その感覚や、腕の動かし具合、痛みの程度が変わるかを確認するなどの

感覚的な情報をお客様と共有し、目標に近づいているかどうかを確認します。

 

目標を聞き出すときのポイント

 

通常は目標は、複数あり、いくつでも更新されてよりよくなっていきますのでページを重ねていくことができます。そのページが積み重なって、最終的な目的の達成が可能になります。

したがって、モチベーションを保つためには、いくつかの目標を設定することが必要ですし、最終的に目的を達成できることになります。トレーナーは、コミュニケーションを通してコーチングし、最終的な目的まで責任を持って導いていくことが、必要です。

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