VRC®

フレイル〔高齢者の虚弱〕は『他動運動+血流制限=筋力・代謝アップ』で解消
(株)プロフィットジャパン 菊賀信雅

政府は、10年後の新しい未来を見据えて、少子高齢化先進国としての持続性の確保などを目的とした、センターイノベーション(COI)プログラムに取り組んでいます。もちろん、フィットネス産業も、「健康寿命延伸産業」として位置づけられており、積極的に取り組んでいかなければなりません。このところの高齢者、低体力者の身体の機能の低下について、ロコモティブシンドローム(整形外科学会)やサルコペニア(日本体力医学会他)などの状況が指摘されています。また、昨年の5月、日本老年医学会では、高齢者が筋力や活動が低下している状態(虚弱)を「フレイル(Frailty)」と呼ぶことを提唱し、高齢者の介護予防、医療に携わる専門職に「フレイル」の理解と予防に取り組むことを呼びかけています。

日本は介護および介護予防サービスに要する費用は8兆円を超えており、少子高齢化が大きな課題となっています。高齢者が要介護状態に陥る過程には意図しない衰弱、筋力の低下、活動性の低下、認知機能の低下、精神活動の低下など健康障害を起こしやすい脆弱な状態(中段階的な段階)を経ることが多く、この状態をアメリカでは、20年以上前から「フレイル(Frailty)」と呼んでいました。一般的に高齢者の虚弱状態を加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態と理解されることも多いのですが、このフレイルの概念には、しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれています。フレイルに陥った高齢者を早期に発見し、適切に介入をすることにより、生活機能の維持・向上を図ることが期待されていることから「要介護状態に陥るのを防げる効果がある」と対策を呼びかけています。

ロコモティブシンドローム、サルコペニアとフレイル(虚弱)の違い?

ロコモティブシンドロームは、加齢に伴い運動器(関節、骨、筋肉)が、衰えてくると介護状態に陥るという整形外科という視点から状態をさし、サルコペニアは、筋肉量減少を主体として筋力,身体機能の低下を主要因としてのとらえ方です。フレイル(虚弱)には移動能力,筋力,バランス,運動処理能力,認知機能,栄養状態,持久力,日常生活の活動性,疲労感など広範な要素が含まれている点で、異なる部分はあると思われますが、いずれも、加齢に伴う身体的機能の低下による介護状態を予防するための取り組みを具体的に進めていくという点では、同じだと思われます。

国内ではまだフレイルの正式な評価基準はありませんが、Friedらによると、

1. 体重が減少(1年以内△4.5kg以上)
2. 歩行速度が低下(50m/分以下)
3. 握力が低下(男性30kg、女性18kg以下)
4. 疲れやすい(わけもなく疲れる、気力がない)
5. 身体の活動レベルが低下

(上記のうち3つ以上でフレイルと判定)

とされています。

最近の調査で、愛知県大府市に住む65歳以上の高齢者約5千人(脳卒中などの持病がある人を除く)のうち11%が該当したというデータもあり、これを全国に当てはめると300万人がフレイルの状態にあると思われます。

フレイルの予防法は、
①十分なたんぱく質、ビタミン、ミネラルを含む食事
②ストレッチ、ウオーキングなどを定期的に行う
③身体の活動量や認知機能を定期的にチェック
④感染予防(ワクチン接種を含む)
⑤手術の後は栄養やリハビリなど適切なケアを受ける
⑥内服薬が多い人(6種類以上)は主治医と相談して薬を調整する (荒井秀典・京都大教授による)

という事ですが、介護予防を目的としたフィットネス施設の立場としては、良質タンパク質やビタミン、ミネラルの摂取するなどの食事に気を配りながら、適度に筋力づくりと全身持久力づくりが必要です。

要支援・要介護、認知症などの予防には1日5000歩を歩き、そのうち7分30秒は早歩きすると効果があるという報告も、あります。(東京都健康長寿医療センター研究所)

これらの状況をうけて、昨年9月長崎で行われた、日本体力医学会では、非常に興味深い内容が発表されました。
それは、「受動的な関節動作」+「血流制限プログラム」を組み合わせトレーニングは、筋厚と筋力をアップするという画期的な発表でした。受動的運動(パッシブエクササイズ)は、本来他動運動の為、動かされた部位の関節の軽運動と周辺の血液循環の促進にはつながりますが、筋力アップにまでは、つながるという報告が無かったため、全く新しい、イノベーションプログラムとして、注目されています。

高齢者や低体力者は、なかなかフィットネスクラブまで脚を運んで、筋力トレーニングは行えませんが、パッシブエクササイズであれば、寝たきりの方でも、行うことは可能ですし、寝たきりの高齢者の体調がすぐれない時でも、本人の自発的筋出力なしでも、行えるので、これからの、医療へのアプローチも可能になります。

認知症予防や介護予防の画期的な方法等して、今後、注目される内容になることが、充分期待されると思います。

他動的に動くエルゴメータとVRC(血流制限)プログラム


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