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9月1日、2日に群馬県高崎市で人間ドック学会の学術大会が開催され、身体活動・運動のセッションの中で早稲田大学、スポーツ科学学術院の澤田 亨(すすむ)教授によって、画期的な発表がありました。

「新開発のサイクルエルゴメーターによる心肺機能推定法の信頼性について」という演題で、今までのVO2maxの間接測定の中での課題であった時間や強度についての解決に役立つものです。従来のエルゴメーターによる体力測定は10~12分かかっていて、かなり高い強度〔最高心拍数の75%〕までの負荷をかけていたものが、時間は6分間、負荷も低いレベル〔最高心拍数の50%程度〕で心肺持久力としての体力を測定するというプログラムを開発したという発表でした。

新開発のエルゴメーターを使って、複数回測定を行ったデータが紹介され、相関係数が高かったこと(相関係数r=0.94)や、多人数を測定したデータの分布が、ほぼ正規分布であることが確認された(固定誤差はなく負の系統的な誤差は見られた)との結果から、新たに開発された自転車エルゴメーターの信頼性は概ね良好であり、人間ドックのオプション項目として活用可能であることが報告されました。

昨年より、健康増進施設の認定要件が大幅に緩和され、健康増進施設が増えることが予想され、今までよりもさらに簡単に心肺持久力が測定できれば、現場でたくさんの人のVO2maxが測定でき、標準的な運動プログラムに沿っての疾患を持った方の運動療法が、スムーズに行えるようになるため、メディカルフィットネスの推進にとてもいい援護となることは間違いないと思います。

6分間で体力測定

できるエルゴメーター

測定後の結果表示画面

また9月初旬にメディカルフィットネスに積極的に取り組んでおられて先進的な運営をされている八王子みなみ野心臓リハビリクリニックの二階堂先生の所にお伺いして、その取り組みのご紹介を頂きました。

心臓リハビリクリニックとのことで、心疾患及びそれに関連する疾患の治療・リハビリを行っておられると思っておりましたが、私の医療機関としての想像をはるかに超える内容を患者(利用者)様に行っておられました。

心疾患・高血圧・糖尿病等は、生活習慣病である為、治療計画や投薬、生活習慣の改善を提案して、特定保健指導等のようにフォローすることは必要と思います。

二階堂先生の場合、それをドクターだけではなく、看護士、理学療法士、健康運動指導士と情報を共有し、あえて手間のかかる診察やカウンセリングを同時に複数人で利用者に接して話をすることで、情報の齟齬がないようにされています。カウンセリングの内容も多岐に渡っており、治療方法や血液検査データ、負荷テストや体力測定値、食事生活調査の結果を分かりやすく説明し、また生活活動習慣や日常の中で出てくるちょっとした運動についてもドクターとその他のスタッフで、本人が実施できるようにアドバイスしています。

電子カルテもその為にカスタマイズされていて、スタッフ各人が患者様ごとの情報をトレーニング履歴も含め細かく入力できるようになっており、それをプリントアウトすることで療養計画書も簡単に作成できるようにしておられます。フィットネス機器は、トレッドミルやエルゴメーター、振動マシンとレッドコードやストレッチポールなどのエクササイズ機器に加えて、フリーエリアでのストレッチ教室や自重負荷での筋トレの内容もプログラムとして指導、紹介されています。

フィットネスクラブと同様に、来院者にはほぼ全員、気軽に一声かけて挨拶をされることで、気持ち的なサポートにも気を配っておられ、ここへ来ると元気になる、医療機関だけれども元気をもらえる施設を意識しておられると感じました。

「病は気から」、加齢にともない身体が弱くなると気持ちも弱くなります。

最近は、心因性○○〔例えば心因性発熱や心因性咳嗽(がいそう:咳)、心因性腰痛など〕ストレスなどの心理的な負担が原因となって発症する症状や病気も明らかになり、身体の不調を改善する為の気持ちのサポートも必要になっています。メディカルフィットネスや健康サポート産業を担う我々は、患者様や利用者の気持ちの支えになる為にラポール(心の架け橋)を形成し、ソーシャルサポート(社会的支援)がより重要(我々のチームで強力にあなたの病気と戦う心理面のサポートをしていますよという姿勢を示す)になっています。複数のスタッフで患者様に対応することで目に見える形であなたをサポートしていますよと伝えることができ、効率的に改善を促す効果もあるのではないかと感じました。

図1にあるような冊子を利用者様に配布し、包括的なソーシャルサポートを行っておられるのを拝見して、会員制ではなくても充分に、地域密着型のメディカルフィットネスが可能である思いました。二階堂先生は、課題としては、治療が終わった後の条件付き運動群の方々の継続サポートをどのように行うことがスムーズに勧められるかだと言っておられました。

 

八王子みなみ野心臓リハビリテーションクリニックの前にて

(左から健康運動指導士の阿部里美さん、理学療法士の横山千裕さん、菊賀、医師の二階堂暁先生)

以前もふれましたが、厚生労働省が「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にくすり」というスローガンを掲げています。身体活動促進をメディカルフィットネスやフィットネス施設等で勧めることが健康寿命の延伸に寄与するとして、民間の力を活用していくことが、求められています。施設を作ることだけに目を向けるのではなく、その後のプログラムや提供するサービスの充実を図ること、今回ご紹介したような、どんどん進化するメディカルフィットネスを行っていくことが、不可欠だと強く感じています。

図1150日間の心臓リハビリサポートプログラムBOOK

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