VRC®

我々の研究グループでは、2021年4月に「フィットネスクラブ新規会員の退会に関連する心理的要因:前向きコホート研究」という原著論文を日本公衆衛生学会の学会誌『日本公衆衛生雑誌』に採択いただき、更に昨年10月に「フィットネスクラブの新規会員における早期退会リスクを推定するモデルの開発」というタイトルの原著論文を日本体力医学会の学会誌『体力科学』に採択いただき、日本におけるFCのエビデンスとして発信させていただいております。世界でも2018年以降、フィットネスクラブの会員定着に役立つエビデンスが数多く発表されています。

我々の研究グループでも、退会しやすい人の特徴は、具体的に下記のような特徴を持った人であるという結果を得ています。〔菊賀信雅ら、2021.2022〕

○若年層(39歳以下)の人、

○教育年数が13年未満の人、

○定期的な通院をされていない人、

○自分のことを健康でないと考えている人、

○フィットネスクラブに入会した目的が健康増進のためでない人、

○ストレス解消のために入会された人、

○体重維持が運動実施のモチベーションとなっている人、

○仕事が忙しいため運動継続できないと考えていない人、

○自分がだらしないがために運動継続できないと考えていない人、

で退会しやすいということが示されました。

これらの結果は先行研究にて報告されている運動継続の関連要因と概ね一致していることを確認しています。

国内に、目を向けるとフィットネス業界でも、このところ新たな優秀な研究者が論文を発表しています。

北陸の雄といわれ、石川県を中心に現在15店舗を運営する株式会社エイムの代表取締役社長の山崎充浩さんです。発表された原著論文は、『フィットネスクラブ利用者における身体活動量と座位時間の実態およびその関連要因の検討』です。この内容を2022年の日本ヘルスプロモーション学会でも、発表をされました。

私、菊賀も、共同研究者として名前を連ねさせていただいております。

その内容は、フィットネス会員を対象にしたアンケート調査を実施し,FC会員の属性別(年齢,性別,在籍期間等)での身体活動量,座位時間の実態,FC会員における身体活動不足の者ならびに座りすぎの者の特徴を明らかにすることを目的としたものです。

結果は、フィットネス会員の総身体活動時間の中央値は360分であり、WHOの身体活動ガイドラインの推奨値である週当たり150~300分を大幅に上回っていました。また、FC会員では、身体活動不足の者の割合は22.7%であり、先行研究である身体活動カントリーカードで報告されている日本の成人における身体不活動者の割合34%や、笹川スポーツ財団が実施しているスポーツライフ調査で報告されている身体不活動者の割合の45.2%よりも低い値でした。さらに、座位時間においては、Baumanらが報告している日本の成人の平均値の420分と比較して、本研究のフィットネス会員の座位時間は240分であり一般の人より短い値でした。

1日480分以上座っている者の割合は、先述のスポーツライフ調査で報告されている割合の27.1%よりも、本研究のFC会員の座りすぎの者の割合である19.1%の方が低い値でした。したがって、本研究のフィットネス会員は、一般人よりも身体活動量は多く、座位時間は短い可能性が示唆されたと報告しています。

このことは、コロナ以降の社会的問題になっている、身体活動量の減少や座位時間が増加したことに歯止めをかけるための具体的方法として、フィットネスクラブに入会して、会員として活動することが、上記の問題解決につながることを示すものです。

上記のWHOの身体活動ガイドラインの推奨値の詳細については、『健康効果を得るためには、1週間を通して、中強度の有酸素性の身体活動を少なくとも150~300分、高強度の有酸素性の身体活動を少なくとも75~150分、または中強度と高強度の身体活動の組み合わせによる同等の量を行うべきである。』としており、国内では、日本運動疫学会、国立健康栄養研究所、東京医科大学との連名で、日本語版を出しています。(図1)〔http://jaee.umin.jp/doc/WHO2020JPN.pdf〕

〔図1〕

フィットネスクラブでは、高強度の有酸素運動も、トレッドミルやエルゴメーターを使用することで、強度や心拍数を測定しながらの定量的なトレーニングが簡単に行えるため、安全で効果的な身体活動が可能です。

また、座位時間に関しては長く座り続けることがいけないことの例えとして、アメリカでは『Sitting is the new Smoking』 と言われるほど、注意喚起されています。

これらのこと(身体活動を増やす、座位時間を減らす)をフィットネスクラブからも積極的に情報発信することが必要であり、そのためのエビデンスとしては、素晴らしい内容の論文が発表され、さらなるEBF:Evidence Based Fitness が実践されることを期待しています。

TOP