(株)プロフィットジャパン
博士(医学) 菊 賀 信 雅
フィットネスクラブは健康寿命延伸産業と位置付けられています。
健康寿命とは誰の力も借りずに一人で生活をしている行ける寿命のことですが、人は健康な状態から少しずつ体が弱く(虚弱:フレイル)なり、その後要介護となります。一度、介護状態になると、フレイルや健康まで戻ることは不可能(介護施設では安全が優先されるため積極的な運動する機会が減る)となるため、何としても、フレイルでとどまる方法が不可欠となります。ところがそのフイレルケアをするための事業体が圧倒的に現在不足しています。
現在のフィットネスクラブは元気な方がより元気になるような施設が多く、身体に自信がある方が多く通っておられます。多くの人は運動不足を感じているがフィットネスクラブは敷居が高いと思っている人が多いのではないでしょうか。それは、フィットネスクラブの施設アイテムが、有酸素運動や筋力トレーニング、プールなどのかなり運動に慣れた方が使うような機器が多く、もう少し取り組みやすいコンディショニング(体調調整)やリラクセーションのプログラムが少ないことも起因しているかもしれません。
前々号では、水素療法についてエビデンスに基づいて、誰でもが参加できフィットネスクラブとの相性も良く、体調調整や不定愁訴の解消、美容や疾病改善等に役立ち、アスリートの競技力向上にも寄与できるためのプログラムとして紹介させていただきました。同じように、既に1000篇以上の論文が出されていて、健康に役立ち、疾病改善・予防や競技のパフォーマンス向上にも役立つのが、振動療法です。
振動療法は、古くから行われており、1970年代からは、宇宙飛行士の無重力空間での筋委縮を防止するための方法として取り組まれていました。
宇宙飛行士が宇宙にしばらく滞在した後は宇宙の無重力状態によって筋肉と骨格どちらも萎縮し、減少することを旧ソ連の研究者が発見しました。研究では 無重力状態の状況下において 宇宙飛行士の筋肉は萎縮し力を失い始め 脊椎、寛骨、大腿骨の骨中成分は流出して1ヶ月で1~1.6%減少します。この問題を解決しなければ 宇宙飛行士たちは無重力の宇宙空間にそれほど長く滞在することができません。この問題を解決するために 旧ソ連の科学者は、全身垂直振動器を開発し、それを使用して宇宙飛行士たちの訓練を行いました。当時のアメリカの宇宙飛行士は、300日の滞在が限界だったとのことですが、全身垂直振動の訓練を受けた旧ソ連の宇宙飛行士たちは437日も宇宙に滞在することができました。
このことを含めて、古くから局部的受動運動や全身受動運動として振動療法は研究されてきており、以下のようなことが明らかになっています。
- 「垂直振動は老人の心肺機能と筋力を高める有効なトレーニング方法である」〔Bogaerts AC ルーバン大(ベルギー)2009〕
- 「全身垂直振動は速やかに動脈壁の硬度を低下させることが可能である」〔Otsuki T 聖カタリナ大教授(日本)2008〕
- 「振動、それは従来の代謝を調節する方法ではなく、進化した原理を用いた方法で唯一の非薬物的な肥満予防法である」 〔Rubin C T(ニューヨーク大学、医用生体工学研究所所長)2007〕
- 「振動によるトレーニングは体の組成を変化させ 体脂肪を低減し 除脂肪量と筋肉量を増加させる」〔Milanese C ベローナ大学教授(イタリア)2013.2018〕
- 「垂直振動は2型糖尿病患者の血糖を改善する 効果 的かつ 低コストな治療法である」〔Klaus Baum 体育大学教授 (ドイツ)2007〕
- 「軽い振動でも 真骨生成を刺激し、骨形態を変化させることが可能である。」〔Garman R ニューヨーク大学医師 (アメリカ )2007〕
- 「振動に別の運動を加えることで 線維筋痛症の疼痛と疲労を改善する効果的で安全な治療法の一つとなる」〔Alentorn-Geli E スペイン バルセロナ大学医師 (スペイン) 2008 〕
- 「振動はパーキンソン病患者に対する理学療法の補助的機材になり得る」〔Haas CT ドイツ ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ大学教授(ドイツ) 2006〕
- 「振動はパーキンソン病の代替的非薬物治療として有効である。」〔King LK カナダ ウィルフリッド・ローリエ大学教授 (カナダ) 2009 〕
- 「振動は体の柔軟性を向上させ アスリートのパフォーマンスを高めるとともに筋肉や人体の運動障害を予防することが可能である」〔Fagnani F ローマ大学教授 (イタリア)2006 〕
- 「水平振動は運動が困難な心臓病患者に対し運動に代わる選択肢となる」〔Matsumoto T 日本滋賀医科大学医学部付属病院研究員(日本)2008〕
- 「水平振動は健康人と冠動脈疾患患者のいずれにも冠動脈機能の改善をもたらす」〔Shota Fukuda 大阪済生会病院医師(日本)2010〕
- 「水平振動は斬新、低コスト、非侵襲的な脳梗塞治療の選択肢の一つである」〔Martinez-Murillo スペイン高等科学研究院(スペイン)2009〕
- 「心臓虚血前に水平振動を行うことで一酸化窒素合成酵素が刺激され、一酸化窒素の分泌が促進され心臓を保護し、障害を防ぐことが可能である」〔Jose A Adams アメリカ マイアミ マウントサイナイ病院医師・医学教授 (アメリカ)2010〕
- 「水平振動治療によって 今日 狭心症患者は中枢・抹消血管の拡張効果の恩恵を受けて運動能力の改善・心筋虚血の低減、左心室リモデリングの予防が可能になる。水平振動は狭心症及び心筋梗塞の新しい補助的治療であると言える」〔Miyamaoto.S 京都大学付属部病院医師、医学博士、教授 (日本) 2011〕
- 「周波垂直振動はその他の運動に取って代わることが可能で、運動による傷害が起こりにくく、腰痛の治療も可能である」〔Rittweger J ドイツ ベルリン自由大学医師 (ドイツ)2002〕
- 「振動は老人の転倒のアクシデントを予防し、QOLを高めることが可能である」〔Oliver Bruyere 骨関節に関するWHO指定研究協力センター博士研究員 2005〕
- 「全身振動トレーニングは介護施設の入居者において、健康上の合併症を引き起こすことなく脚力の低下を抑えるために使用できる」〔 BRANDON F GRUBBS(アメリカ)2020〕
- 「16 週間の低レベルの WBV運動は、虚弱高齢者が身体機能の向上レベルを達成するために容易に利用できる適切な刺激を提供する。」 〔D Wadsworth(アメリカ) 2020〕
全身振動療法に関する方法については大きく分けて2つあります。
ひとつは、全身垂直振動(Whole Body Vertical Vibration〔WBVV〕)ともう一つは全身水平振動(Whole Body Periodic Acceleration(全身周期加速度)〔WBPA〕)です。
全身垂直振動の原理は、通常の運動と同様に重力の物理的作用によって体の筋肉・骨格・神経系統に変化をもたらし、さらに内分泌とその他の生理作用に影響を与え、各種の健康維持促進に有益な効果があります。また垂直振動によって受動的に全身を刺激することで血液循環が改善され、一酸化窒素が分泌されます。これにより、心血管の健康や慢性病の予防にも寄与します。特に、筋肉の刺激が血液循環を助け、内臓や脳への酸素供給をサポートします。
水平振動は通常は、横になった状態で頭から足の方向に規則的に振動することが多いため、筋肉が酸素や栄養を消費することなく血流が全身に行き渡ります。その結果、水平振動では垂直振動よりも多くの一酸化窒素が生成され、使用後の血中酸素濃度が高くなることが確認されています。これにより、心血管疾患やその他の慢性病の予防に効果的です。水平振動を受けると体には特別な応力として剪断力が働き、人体内の血管内皮細胞が刺激され、前述の一酸化窒素が分泌されます。一酸化窒素は血管を拡張し心臓や大脳の血流量を保ち、細胞を保護します。それゆえ 虚血性心疾患や脳梗塞、血栓の予防・改善につながります。その他にも末梢動脈病変や肺高血圧症の軽減にも効果があり、心筋梗塞の後遺症を低減することも可能です。水平振動は心血管疾患を予防する以外にも救急の現場でも補助的に用いられています。心肺停止前後のいずれかの使用時期にかかわらず水平運動は、救命率を高めることが可能です。また蘇生後の心血管における後遺症も低減されます。水平振動機器の発明によって心臓と脳血管疾患の予防と改善に有効な非侵襲的治療法の選択肢が一つ増えたことになります。
よって、垂直振動の主な効果としては、筋肉・骨格系・神経系にアプローチするため、一般的な運動の効果に近く、受動的に利用することでリラックス効果も期待できます。水平振動は、主に心臓血管系(脳血管、末梢血管系)に作用し、一酸化窒素を分泌させるため臓器を保護し、血管を守ります。(非侵襲的な治療法として、身体を休め、体調を調整する)
全身垂直振動器では「方向」、「時間」、「速度」の3つの変数を必ずコントロールしなければなりません。振動の強度は振動数と振動の幅によって決まり単位は重力(G)です。 垂直振動は縄跳びに似ていますが縄跳びは能動運動でその振動の幅は15から25cm で毎秒約1回の速度です。全身垂直振動器の振動は通常 1から20Hzの速度です。1Hzでは1秒間1回、それゆえ 1Hzは毎分60回の振動となります。垂直振動の幅は通常 1から10mmの間でコントロールされ、強度は通常1G程度であり アスリートの場合は2から5Gまで増加が可能です。垂直振動は前述のように、様々な疾病を予防・治療する上で優れた点がたくさんあります。
また、水平運動も、心臓血管系(脳血管、末梢血管系)に作用し、一酸化窒素を分泌させるため臓器を保護し、血管を守ったり、心臓の救急法としても用いられており、両方の振動療法はこの20年で、たくさんの論文が発表され、多くの貢献をしています。
最近でも、多くの研究がおこなわれており、総説やシステマティックレビュー・メタ解析も行われています。
運動量を定量化し、振り幅:垂直:1~20mm、水平4~20mmを中心に周波数(Hz)によって目的ごとにプログラムを分ける等の機器も出来ています。
効果を検証されたプログラムや機器を使うことで、安全で、安心して行えるパッシブエクササイズとして定着していくのではないかと思います。
普段から、運動不足を感じていながらなかなか踏み出せない人に向けて、手軽で、どなたでもができるコンディショニングやリラクセーションプログラムとしての振動療法を提供することで、身体をほぐし血行を良くして(水平振動)+運動的な刺激(垂直振動)を加えることで、効果を体感しやすく、「楽になった」、「本当に気持ちよかった」と思っていただくことが、継続性を担保できるものと考えます。さらに、その前に水素の吸入が加わるとパッシブメソッドとしては、さらに効果が高まるのではと考えています。
当社関連のエビデンスをたくさん創出しているメーカーから、世界初の振動するソファーも発売されます。
まだまだ振動療法は、奥が深いので、さらなるエビデンスをご紹介させていただければと思っております。
(株)プロフィットジャパン
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